「第一回二子玉川学会~二子玉川を愛し学びあう交流会~」開催レポート

 去る9月23日(月・祝)に「第一回二子玉川学会~二子玉川を愛し学びあう交流会~」が開催されました。当日は二子玉川近隣やその他さまざまな地域から、何と118名もの参加者が東京都市大学夢キャンパスに集結。地域の今後をみんなで考えていく上で意味深い講演や、近隣大学による研究発表、地元企業、市民による活動などの幅広い分野の発表が展開され、大盛況のうちに閉幕しました。10月7日に実施したリフレクション・ミーティングで示された有志メンバーのコメントにもふれつつ、当日の報告をいたします。

スタートは発起人の西山敏樹(東京都市大学准教授)氏によるご挨拶
いよいよ開幕!

 開会30分前には続々とお客様が受付に並び、なかには告知された「せたがや区報」を切り抜いてご持参の方も。定刻の10:30に発起人の西山敏樹先生が開会を宣言。世田谷区からは野口章仁氏はじめ行政の方々が応援に駆けつけてくださいました。終日司会を務めたのはフリーアナウンサーの福満景子さん。

続いて野口章仁(世田谷区玉川総合支所二子玉川まちづくりセンター所長)氏のご挨拶
3つの基調講演

 午前中は、3人の有識者による基調講演。トップバッターの小林先生は、多くの課題を乗り越えて創造的なまちづくりを実現されてきた事例や、その過程で重視すべき事がらを中心に話されました。本題の「遊休施設の保存再生」では、専門家と市民との対話が鍵であり、防災観点、広域避難場所、ライフラインの確保、グリーンインフラの実験場、管理・マネージメントの方法などの課題を、数的な裏付けを用いて実証することの重要性を指摘されました。次のご登壇は、二子玉川の水資源やグリーンインフラ、エネルギー循環などを中心に研究されている厳先生。偶然にも小林先生のご指摘にも応えるような内容で、水や緑などの地域の生態系サービスをさらに豊かに保つために、そのストックを知ること、暮らしの環境コストを測り、減らしていくことなどの提言を具体的な数値データーを用いて話されました。最後は、郷土史会から地元でも大人気の佐々木氏が、二子玉川史の象徴的存在ともいえる「兵庫島」の由来についてユーモアたっぷりに話されました。

基調講演①(明治大学副学長 小林 正美 氏)テーマ:遊休施設の保存再生について

基調講演②(慶應義塾大学教授 厳 網林 氏)テーマ:二子玉川の水辺や緑の恵みとは?~研究者の視点より~

基調講演③(二子玉川郷土史会事務局長 佐々木 幹雄 氏)テーマ:二子玉川・兵庫島の謎に迫る

「専門家との協働による市民参画の創造的まちづくり」を4つの事例を用いて紹介する小林正美(明治大学副学長)氏
図らずも厳先生にバトンをつなぐようなにお話でまとめられた小林先生
厳網林(慶應義塾大学教授)研究室の試みは二子玉川の「生態系サービスの見える化」
数的根拠に基づいたちょっぴり専門的な話題にも真剣に耳を傾ける聴衆の皆さん
ユーモラスな語り口で聴衆を引きつける佐々木幹雄(二子玉川郷土史会事務局長)氏
令和元年10月、台風19号という新たな歴史を刻んだ兵庫島

裏方より

 お三方の講演は、偶然にも3つのテーマが一つのストーリーに編まれたように流れ、会場一帯がその物語に集中する空気感に包まれました。裏方の一人として基調講演のオーガナイズにも携わられていただいた私は感動とともに2点ほどの気づきを得ました。1つは、今回の偶然による効果から、基調講演を事前に、より意味を生み出せるように話し合って設計することの可能性への気づき。もう一つは、「二子玉川」というオーディエンスにとっての自分ごとの題材をテーマにした講演であれば、多少難しい内容であっても前のめりで聞いていただけるということ。一般の方が自身の生活とは距離のある専門的な話に耳を傾ける情景は、理系シンポジウムに参加する機会の多い私も目にすることは少なく、今回の基調講演では新鮮な感動と気づきを得ることができました。

ランチとお茶のおもてなし

 地元野菜と手料理をふんだんに提供くださったのは川辺農園の川辺さんを囲む女性グループ。茶道の師匠でもある川辺さんは皆さんにホッとする一時を!という思いを込めて、美味しいお抹茶も振舞ってくださいました♡

川辺さんの心のこもったおもてなし
午後の研究発表

 午後は6つのセッションにて、二子玉川で活動される広範囲にわたる専門分野の方々が、それぞれに熱のこもった発表をされました。18団体の代表による発表は、約3時間半にわたって繰り広げられました。

*Session①ベンチャー・経済・IT・まち・不動産

*Session②商店街

*Session③交通・モビリティ・移動

*Session④健康・スポーツ・教育

*Session⑤アート・文化

*Session⑥多摩川・SDGs

6つのセッションから計18組の団体の代表がポスターセッションを実施
もう一人の発起人、佐藤 正一((一社)二子玉川エリアマネジメンツ代表理事)氏による中締めのご挨拶

懇親会は、地元@ふたこビール

 「二子玉川学会~二子玉川を愛し学びあう交流会~」第一回の試みは大盛況にて閉幕。皆さま本当にお疲れさまでした!! ふたこビールさんは、いつもの美味しいビールでこの達成感を盛り上げてくれました。

二子玉川の恵みがいただけるお店といえば「ふたこビール醸造所」
振り返ると……

 10月7日(月)にリフレクション・ミーティングが実施されました。学会当日に回収したアンケート結果と有志たちによる意見交換の主な焦点は、1組10分の持ち時間で18組が登壇した午後の研究発表。アンケートより、「色々なジャンルの人が二子玉川を良くしたい、楽しく暮らしたいと夢を話してくれて良かった」、「地元を愛する人たちの前向きな取り組みが聞けて嬉しかった」、「地元の話題がたくさんの人が関わっていくことで膨らんで面白いコラボだと思った」「街の魅力にさまざまなものがあると分かった」などのプラスコメントが目立った一方で、「質疑応答の時間がなかった」「テーマを拡げすぎ」などの辛口のコメントも。その他、「発表者の熱量が高くタイムキーピングには苦労した」という事務局からのコメントや、「休憩時間が必要だった」、「終盤はオーディエンス側からの疲れが伝わってきて発表し辛かった」という登壇者からの後日談も印象的でした。

そして学会はつづく

 回収したアンケート数は16枚とやや控えめでしたが、今後に繋がる記述は多く、特に午後の研究発表に関する一例を分析すると「街の魅力にさまざまなものがあると分かった」と「テーマを拡げすぎ」は表裏一体。改善にはまだまだ議論が必要そうです。また、リフレクションにて西山先生も注目されたコメントが「発表者を広く募って開かれた発表の場になるといい」でした。街にとってよりよい学会に育てていくために、これからの対話が楽しみです。嬉しいことにこの日は「当日の多彩な発表に刺激を受けました!」と、これまた多彩な方々が参加されました。新メンバーを交え繋がりの輪は拡がっていきます(^^♪

 初回イベントを短期の準備で盛況に導くことができたのは、発起人の西山先生と佐藤さんの強い思いから始まって、事務局の方々の迅速な実務作業があってこそ。さらには、有志メンバーがそれぞれに専門(知識、人脈、技能)分野を持つ、いわばプロボノ集団であったことが挙げられそうです。皆さんそれぞれに思いを込めて手弁当でイベント開催に尽力されました。そして、もちろん当日を盛り上げてくださったのはオーディエンスの皆さんです。これらすべての方々の熱い力の結晶に他なりません。

そして「二子玉川学会~二子玉川を愛し学びあう交流会~」はつづく

新メンバーを迎えて。リフレクション・ミーティング風景(10月7日)
記者より

 私は、2019年4月実施の初回より有志メンバーの一人としてミーティングに参加・活動しています。地域に知人が少ない私には、このプロジェクトへの参加には正直少し勇気が要りました。参加理由は「街の活動にもサイエンスを!」というサイエンスコミュニケーターとしての使命感。そして今回、基調講演オーガナイザーの佐藤正一さんのお手伝いをさせていただき、慶應義塾大学の厳網林先生に二子玉川の水と緑の恵みについてSDGsとサイエンティフィックな視点から語っていただきました。この日のために準備くださったご講演は地域の力にもなるお話でした。あの日、勇気を出してホント良かった~♡

 最後に大切なことを。この度の台風15号、19号は日本の広範囲にわたり甚大な被害をもたらし、特に19号では二子玉川地域も大きな打撃を受けました。被害を受けられた皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

関連リンク

【活動報告①】二子玉川学会 ~二子玉川を愛しまなびあう交流会~ いよいよ始動!!

http://futakoloco.com/11007/

9/23(月・祝) 「第一回二子玉川学会~二子玉川を愛し、学びあう交流会~」開催します!!

http://futakoloco.com/12047/

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この記事を書いた人

牟田由喜子

瀬田に移り住んで20年余り。二子玉川地域の魅力をしみじみ味わう今日この頃です。

早春には、多摩川河川敷や兵庫島の牧水たんぽぽ碑付近、タマリバタケ、玉川野毛町公園などでタンポポ・ツアーを実施したり、自然観察することで、みんなで社会や環境課題に向き合いたいと思っています。

人も自然も未来に続く日常のために、地域を愛でつつ、学び合い、対話を重ねる時間を大切にしたいという想いを込めて、サイエンス・ワークショップなども実施しています(^^♪