どうぞのごはん♯42 谷津田さんの「マルタの桜」とふきみそ

 今年最初のふきのとうをみつけて、ふきみそを作った夜のこと、漁協の谷津田さんが亡くなったという電話がありました。ワンコの散歩の途中に中西さん(せたがや水辺デザインネットワーク)が、3月8日に開催予定の「マルタウグイの産卵環境づくり」のお話をしようかなあ、と、お宅に寄ってみたら「お骨になっていたんだ」と。急なことで、お身内でお見送りは済ませたとのことでした。

マルタウグイの産卵環境づくりは、2016年から谷津田さんにご指導いただきながら開催している。まちのみんなで、川底をきれいにする。中央青い帽子が谷津田さん(撮影:こばなお)

 私が谷津田さんに初めてお会いしたのは、たぶん10年以上前、、2006年だか、7年だかの「せたがや水辺の楽校」の忘年会だったのではと思います。そのころの私は、子育てに悩み、自分の仕事としての「子どものアトリエ」の開設にふみだしつつ、PTAに関わっていたころでした。保護者の一人として、せたがや水辺の楽校の活動に顔をだしていた私。「へ~、こんなまちなかに漁協の人いるんだ」という感じでした。

昨年のかわのまちアクションで。川にザブザブ入って後進を指導。(撮影:こばなお)

 それから幾年月を経て、2016年の3月に、「マルタウグイの産卵床づくり」を「第1回かわのまちアクション」として行うことになりました。それは「二子玉川エリアマネジメンツ」と「せたがや水辺デザインネットワーク」で一緒に運営するということで、その場で参加者といっしょにごはんを食べたい、ということもあり、事務局と現場水辺ごはん担当として、私にも声がかかりました。実は、私はその時まで、「マルタウグイ」を知りませんでしたし、丸太のように大きな魚が大群ですぐそこの川で産卵してるなんてことも知りませんでした。もちろん、見たことなんかありませんでした。

マルタウグイが群れを成して産卵にやってきます(撮影:リュージ)

 そのころから、谷津田さんとお話しすることも増えた私。私が、谷津田さんに初めて会った2006年頃よりずっと前から、谷津田さんと一緒に多摩川を見続けているせたがや水辺の楽校のリュージや中西さんは、谷津田さんのことを、べらんめえオヤジで、「バカヤロー」とすぐ怒鳴る、なんて言っていたのですが、私はバカヤローなんて言われたこともなく、いつも優しく、「マルタが来てるから、子どもたちに教えてやってくれよ」と言ってくださる方でした。(奥様との仲睦まじい様子を聞くと、もしかして、女性には優しい方だったのかも・・・。)

産卵床を見に行くと、いつも谷津田さんに会いました。(撮影:細田正実)

 そして、第一回かわのまちアクションで産卵床を作ったあとの2016年3月の終わりごろから4月にかけて、たくさんのマルタウグイが産卵床に押し寄せました。生まれてはじめてその様子を見た時、もう、(50歳になっていたのに!)、私はいたく感動しました。次女や、原っぱで遊んでいる子も連れて行って見せました。

2016年にリュージが撮影したマルタ産卵の様子

 それから毎年、谷津田さんに教えていただきながら、まちのみんなでマルタウグイの産卵環境を作ってきました。2017年にこのfutakolocoがはじまり、私の記事にも何度か谷津田さんに登場していただきました。

そのどこにも、「マルタの桜」が。

花さんぽ♯9 まちかど(投稿日2017年4月2日)

花さんぽ♯37 水辺に春がきたよ♪(投稿日2018年3月17日)

花さんぽ♯43 マルタの桜(投稿日2018年4月1日)

 2月2日(日)。せたがや水辺の楽校では毎月(1月と4月は除く)第一日曜日に「あそびの日」を開催しています。2006年から、今日まで15年ずっと続いています。この日、二子玉川エリアマネジメンツの理事である中村さん(かわのまちアクションを担当してくださっています)と、futakoloco編集長のこばなおが、谷津田さんのお宅にお線香をあげに伺うというので、私も同行させてもらうことにしました。いつもは、スタッフとみなさんのお昼にせたがや水辺の楽校原っぱで、炭火をおこして豚汁など作るのですが、この日は、ふきみそのおにぎりと、シャトルシェフにいれたおでんを持って原っぱへ行き、みなさんがバードウォッチングをしている間に谷津田さんのお宅へ伺いました。

谷津田さんのお宅の前には、私が勝手に「マルタの桜」と名付けた桜の木があって、そこで、中村さんと、中西さんと3人で、こばなおに写真を撮ってもらいました。

右から、中村輝之さん(二子玉川エリアマネジメンツ)私(ゆか)・中西修一(せたがや水辺デザインネットワーク)撮影:こばなお

 谷津田さんはいったい、どのくらい長い年月、この桜の下で多摩川をみてきたのでしょう。昨年の7月、砧南小学校の夏休みのサマースクールで、谷津田さんは第二次世界大戦中の体験を、子どもたちに語ってくれたそうです。

谷津田さんと奥様。桜の前で、仲睦まじく・・・ほんとうにありがとうございました。(ご遺族にお写真をお借りしました)

誰も、谷津田さんがやってきたことを同じように続けていくことはできないと思う。でも、谷津田さんの思い~多摩川で産卵するマルタウグイを子どもたちに見せたい~を私たちのやり方で繋いでいくことはできるかもしれない。

産卵床作りのひとコマ。脚立の上はリュージ。左から、米さん(二子玉川カヌー部)ミキ、谷津田さん、スミちゃん(せたがや水辺の楽校)撮影:こばなお

 人は、一人ひとり持っていることが違うので、一人では続けていくのが難しいことでも、数人の仲間が集まって実現できる思い、継続できることは多いように思います。ですが、あまり大きな集団になってしまうと、却って実現から遠ざかってしまうような気が。

ひとりひとりが、自分のできることを、すこしづつそれぞれのやり方でやり、同じように活動している自分たちとは違うグループとゆるやかにつながりながら、いっしょにできる事はいっしょにやって、お互いの思いを実現し、継続していけたらいいのにな~といつも思います。

 谷津田さん、私たちにマルタウグイの産卵床づくり教えてくれてありがとうございました。

台風19号で多摩川の様子も変わってしまいましたが、リュージが「谷津田さんなら「ここだ」って言う」というところを中西さんと探しています。3月8日に産卵環境を作りに行きます。

今年最初のふきのとうみつけた

私はきっと、ふきのとうを見つけたら、ふきみそを作り、おにぎりを握るたびに、谷津田さんのおうちに伺ったこの日のことを思い出すと思います。そして、まちのみんなに声をかけて、マルタが多摩川にきてくれるように産卵床をつくりたい。

マルタの桜が咲いたら、そこで、谷津田さんが多摩川をみてくれていると思うから。(ひっかけて、マルタを釣ってる輩がいたら「バカヤロー」って怒鳴り声がするかも・・)

ふきみそ

ふきみそ

▶ふきのとうを細かく刻みます

▶フライパンに油を敷いて軽く炒めます

▶お酒、お味噌を加えます

▶みりんをいれます。

原っぱで。ふきみそおにぎりいただきます~

 

 

 

 

 

 

名称
マルタの桜
所在地
世田谷区宇奈根

この記事を書いた人

ゆか

サラリーマン時代に東急ハンズ玉川店、玉川高島屋を担当し、ここいら辺が気に入って移住。岡本の坂下に住み、母となり産んだ子どもたちはもうオトナ。2005年から鎌田で子どものアトリエを始め、2016年に大蔵5丁目「ゆいまあると3つの磁石」に引っ越し「子どものアトリエ」「映画とキャラメル」など、よくわからないことを展開中。NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク事務局。