【コラム:ココロを扱うお仕事です】#16 ブロークン・ウィンドーズ理論:街の落書きを消せば、犯罪の発生率は低くなる!?

 9月30日(日)は、国道246号の新二子橋の橋脚に書かれた落書きを消すイベントが行われるそうです(詳細はこちら:9/30(日)は二子玉川で多摩川の未来を語ろう!【新二子橋橋脚落書き落とし&トークショー】)。

国道246号新二子橋橋脚の落書き
二子玉川駅鉄橋の下の落書き

 私は、街の落書きを消すことは、良いことだと思っています。街の落書きを消すことによって、その街の犯罪発生率が下がるという理論があります。今回は、その理論「ブロークン・ウィンドーズ理論)をご紹介いたします。

 「ブロークン・ウィンドーズ理論」とは、誰かが1枚の窓ガラスを壊したとき、その壊れた窓ガラスをそのままに放置していると他の人も何ら罪の意識もなく、つられて窓ガラスを壊すようになり、結局、その地域全体に無秩序感を生み出すことになり、ひいては犯罪者がその地域の住民の無関心に付け込み、悪事を働くようになるという環境犯罪学上の理論です。日本語では「破れ窓理論」「割れ窓理論」「壊れ窓理論」などとも呼ばれています。

 割れた窓を街の落書きで置き換えて言うと、落書きが放置されていると、無秩序感が広がってしまい、結果として、地域における犯罪の発生率が上がっていく、ということになります。1980年代に治安が悪化していたニューヨーク市で実践され、治安回復のためにまず地下鉄などの街の落書きを消したことで、犯罪発生率が減少したと言われています。

 ニューヨーク市のこの政策は「ゼロ・トレランス(不寛容)」政策と呼ばれています。具体的には、次のようなことをしたようです:

 ・警察に予算を重点配分し、警察職員を5,000人増員して街頭パトロールを強化
 ・落書き、未成年者の喫煙、無賃乗車、万引き、花火、爆竹、騒音、違法駐車など軽犯罪の徹底的な取り締まり
 ・ジェイウォーク(歩行者の交通違反)やタクシーの交通違反、飲酒運転の厳罰化
 ・路上屋台、ポルノショップの締め出し
 ・ホームレスを路上から排除し、保護施設に強制収容して労働を強制する

 一方でこの理論に対しては、反対意見も多く存在しますので、ご紹介しましょう:
 ・1990年代には、「ゼロ・トレランス」政策を採用していない、アメリカの他の多くの都市でも犯罪の発生率は低下していた
 ・重大犯罪における「ゼロ・トレランス」の効果は、同じ頃ニューヨークで行われていた他の取り組み(上記警察の改革、福祉から就職へのプログラム)の効果と区別することが難しい
 ・犯罪率の減少は原因も考えられる。たとえば、以下の①~③
   ①麻薬の流行が収まった
   ②ロックフェラー麻薬法により、刑務所の収容人口がゼロ・トレランスとは無関係に増加した
   ③人口構成の変化により、(犯罪を起こしがちな)16歳から24歳の男性人口が減少した

 私は「国家が国民の人権を無視して、必要以上にバシバシ取り締まればいいのだ」と言いたいわけでは決してないことにご注意いただきたいと思います。ここで伝えたいことは、落書きを消すことは、単に道徳的に良いことということに限らず、犯罪を減らすこともできる可能性があり、一応、学問理論的な説明も付けることができるということです。ぜひ、街を挙げて進めるべきことだと思っています。

【参考文献】
藤本哲也「犯罪学の窓」(中央大学出版部、2004年9月)

参考サイト
 割れ窓理論を知っていますか?
  https://kokoronotanken.jp/waremado-riron-shitteimasuka/
 ニューヨーク市で犯罪が激減した理由は?〜「善きサマリア人の実験」の教えること(2005.04.28)
  https://www.es-inc.jp/library/mailnews/2005/libnews_id001743.html
 
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futakoloco編集部よりお知らせ
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投稿者: 大瀧 靖峰

弁護士。丸ビル綜合法律事務所(パートナー)。 2015年まで二子玉川に7年間在住(最後の3年間は二子玉川商店街に在住)。 二子玉川街情報プロジェクト「フタコロコ」の法律アドバイザー。 http://otaki-yasumine.kaisya.info/