2019年12月18日に玉川玉川高島屋S・Cショッピングセンターにて開催されたクリスマスプロジェクト『love and trees』。Part①に続きPart②では、イベントの第二部、more trees代表の坂本龍一さんと事務局長の水谷伸吉さんによるトークセッションの模様をお伝えします。
“消費する”とは、企業への投票でもある
第二部は、more trees代表の坂本龍一さんと事務局長の水谷伸吉さんによるトークセッション。まずは特にここ数年、世界、そして日本の各地で大型台風に襲われ、広範囲で水害を被っています。これは偶然というよりは地球全体の気候変動が原因と思わざるを得ないという話題から。そして台風19号で浸水した方々へのお見舞いが続きます。
教授が環境問題、気候変動に関心をもったのは1992年にリオデジャネイロで地球サミットが行われたころのことで、『不都合な真実』で有名なアル・ゴアさんの名前も挙がりました。その少し前から「エコロジー」を文化人の方々がささやきはじめたことは私も記憶していて、そこに教授も存在し、当時賛否の議論があったことが蘇ってきました。あれから30年弱の時を経て人々の意識は随分変わりましたが、それでもCO2の排出量は減っていません。「そんなことはみんな分かっていると思う」と前置きしつつ、「ではなぜそれを転換できないのか」と問いかけながらショッピングセンターという場でお二人は訴えます。
「一人一人ができることはもちろんやってほしいけれど、国や産業を動かすには消費者の行動が大切です。つまり、消費者が声を出すことで企業が変わり、その企業が調達を変えていくと地球の裏側で起きている森林破壊も少しは変わるかもしれない。みなさんの毎日の消費一つひとつはむしろ企業への投票コード。その会社がどんなポリシーを持って製品を造っているかということも知って商品を選んでほしい。そうすることによって回り回って地球全体がよくなっていく」という教授の話は、この場にふさわしい、私たちもすぐに意識できることのように思いました。
“木製品”は、CO2の缶詰
more treesの活動って木を増やす? それが主眼ならちょっぴり心配になる人もおられるでしょう。私もその一人でしたが、もちろん、それだけではないようです。「日本は国土の約7割が森林で、その約4割が主に戦後植えられたスギやヒノキ。木が足りなかった戦後、まっすぐに早く育ち、家を建てる材木に適したスギやヒノキをたくさん植えた結果、多様性の乏しい森が増えていることが問題視されています。ということで、more treesの活動も大事なのは保全。この現状を改善するために、その森を構成している木の種類を変えていく、間伐をする、などの保全活動をしています。一度人間が手を入れた森は、人がメンテナンスし続けていかないと死んでしまう。森が死んでしまうと、そこで生息している動植物も棲めなくなり、生き物の多様性が乏しくなる。一方で、森は大きな保水所の役目も果たしています。もしも無くなってしまったら深刻な水害を招くことにもつながります」お二人は、森林保全活動の大切さを力説されました。
さらにmore treesの活動では、使い道のないスギやヒノキを積極的に使うリサイクルにも焦点を当てています。当日お二人が座っていた椅子(株式会社ワイス、ワイス提供)、そして隈研吾さんのTSUMIKIも然り。木材を有効利用することが、森の環境を維持する上で大切なことなのです。
教授は、「そこで忘れてならないのは温室効果ガスともいわれるCO2の問題です。木はCO2を閉じ込めている、いわばCO2の缶詰。燃やすとCO2が大気中に出てしまうから、なるべく燃やさずに使うのです。いい家具であれば100年も200年も使えて、その間CO2を閉じ込めておけます」と。なるほど、木材の有効利用は温暖化の歯どめにもつながるというわけですね。
教授からのメッセージ
12月24日イブの夜、玉川高島屋S・Cさんから「3000 Forest CHALLENGE」の賛同者に期間限定のグリーティングムービーが届きました。そこに認められていたのは、教授がトークセッション当日に結んだ言葉でした。
森林の恵みを受けて暮らしている 私たちの行動は、 森を生かすことも失すこともできます。 人間が積み重ねてきた行動により起きている、 様々な環境変動を自分たちの手で止めましょう。 未来の子供たちが暮らす世界も 今、私たちが暮らしている世界のように豊かであってほしいと願います。 一人一人が都市と森をつなぐ架け橋となってくれることを祈りながら。 Wish more love and trees, and Happiness Christmas! 坂本龍一
“にわかファン”ではないぞ!の証
ところで、私は教授の大ファン。十代の頃から坂本龍一という人を人生の師と仰ぎ、彼のワークを追いかけてきました。写真のグッズ一つ一つに語りたいエピソードがあるのですが、この場に相応しい1点を挙げるとすれば、2009年発行の「COURRiER Japon」でしょう。more trees始動に合わせて発行された教授責任編集のサステナブルな文明へ「森と地球の未来」で、水谷さんもすでにmore trees事務局長として寄稿されています。「人類が次のステップに踏み出すための意識改革を後押しできればいいと思います」という教授の言葉でまとめられていて、今読んでも響いてくる言葉が満載のマガジンです。
音楽家、坂本龍一の表現を追いかけていると、美しさのその全てに地球・生命・進化などの壮大な歴史、哲学、科学をも包括した「智の世界」に誘われます。
「love and trees」を終えて
クリスマス期間の玉川髙島屋S・Cは、木の温もりたっぷりのツリーオブジェで彩られていました。51年目を迎えた館内にも環境活動に力を注ぐテナントがいくつも出店しています。
最後に、東神開発(株)営業本部玉川事業部副部長の菊山みちさんに、開業50周年玉川高島屋S・Cクリスマスプロジェクト「love and trees」を終えた今の思いを伺いました。「平日の昼間でありながら、お子さま連れからシニアの方まで幅広い世代の(男性陣も目立ちました)多くの方々が集まってくださって、東北ユースオーケストラの演奏と坂本龍一さん、水谷伸吉さんのお話、語りを熱心に聞いてくださいました。その雰囲気、姿勢などから、このプロジェクトに賛同してくださっていることが、私たちに深く伝わりました。実現できて本当によかったです」
取材者、そして教授大ファンの私も、どんな世代にも伝わる言葉と、弦楽四重奏の温かい音楽に込められた教授の「love and trees」と「peace」への思いをしっかり受け止めました。そのメッセージを胸に、美しい未来の地球を描きながら、この地域で私にできる活動に邁進していきたいという思いを強くしています💛
◆関連リンク
【レポート】玉川高島屋S・C開業50周年記念 クリスマスツリー完成式
【コラム:イソマイの建築楽(ケンチクガク)】世田谷編#6 二子玉川と隈研吾①
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