たまよんガーデン・コミュニティ 祝1周年記念 オーナーインタビュー

地域に開かれたレンタルスペース+重度障がい者のシェアハウス

玉川地区に誕生した「たまよんガーデン・コミュニティ(以下、たまよん)」が、2025年10月でオープンから1年を迎えました。「地域に開かれたレンタルスペース」と「重度の障がいを持つ人々のシェアハウス」を合体させ、新しい場のかたちをスタートさせた「たまよん」で、代表の速水葉子さんにお話しをうかがいました。

マルシェ会場として使われた際のまよんガーデン・コミュニティ

1階はレンタルスペース「たまよんサロン」

1階の「たまよんサロン」と呼ばれるレンタルスペースは、「雑木の庭」と名付けられた前庭に面しており、室内からも緑を楽しめるくつろぎ空間です。この1年、映画上映会やウクレレ教室、クリスマス会、マルシェのほか、理学療法士の勉強会など、さまざまなイベントの会場として使われてきました。

2階は重度障がい者のシェアハウス

2階では重度の障がい者の方々が生活しています。居室は3部屋のみ。もちろん、設計の段階で速水さんは「経営的には庭を潰して建ぺい率ギリギリまで部屋数を増やせば利益を得られる」と専門家からアドバイスを受けたそうですが、外出が難しい住人が自宅にいながらにして緑や小鳥のさえずり、青やピンクに色移ろう空、流れる雲、風…を当たり前に感じながら“普通に生きられる環境”を確保するため、部屋数を抑えて庭を残し、横になったまま空を望める大きな窓を各部屋に設置し、車椅子のまま出られる広いバルコニーにスタンド式菜園を作ったそうです。

多摩川の花火を独り占めできるバルコニー

人が出入りするサロンが地域交流の拠点に

1階がサロンで2階が重度障がい者の方々のシェアハウスだと何がいいかというと、お出かけが困難な2階の住人にとって、楽しいこと—見たい映画や聞きたい音楽、参加してみたいイベント—が、向こうからやって来るかもしれないということ。サロンをレンタルする人やイベントに訪れる人々にとっては、ふだん道でばったり会うような機会はほとんどないけれど実はすぐ近くに住んでいる隣人と、イベントを介して会えるという利点があります。実際、サロンを通じて交流が生まれ、「あそこの障がい者」と呼ばれがちだった住人が、「たまよんの〇〇ちゃん」と名前で認識されるようになったという嬉しい変化もあったと言います。

シンプルでありながらとても大切なこと—道で会ったら「おはよう」「いってらっしゃい」。「年齢、国籍、性別、関係なく、声をかけられたら誰しも嬉しいですよね」と語る速水葉子代表

たまよん」は福祉施設?

こう書くと、つい「素敵な障がい者施設」と言いたくなりますが、速水さんが強調するのは「たまよんは障がい者専用の福祉施設ではない」という点。限りなく福祉的なことをしているけれど、たまよんが目指すのは、障がいの有無や年齢、介助する人される人などの立場に関係なく、誰もが当たり前に普通に生きられる環境を作ることだと言います。人とのつながりが希薄で、20〜30代でも孤独に悩む人が少なくない昨今※1、「たまよん」は、誰もがふらっと立ち寄れる“街の小さなオアシス”として構想された、前例のないプロジェクトなのです。

アフリカの太鼓やノルディック・ウォーキングも

だから「たまよん」は、時々「たまよん」を飛び出し、地域の人々との交流を広げる体験型イベントも定期的に開催しています。「ノルディック・ウォーキング体験会」では、講師の先生とともに国分寺崖線や多摩川の水辺を歩き、「アフリカのタイコをたたこう!」の会では、西アフリカの太鼓ジャンベでアフリカの伝統的なリズムに乗りながら爽快な汗をかけたりもします。もちろん、これらのイベントは、誰でも参加できます。

2年目に向けて

徐々に地域の拠点として認知度を上げているたまよん。2026年はもっと多くの人々に地域の憩いの場として知ってもらいたいと速水さんは言います。1階の「たまよんサロン」にはフル装備のキッチンもあるので、料理教室はもちろん、地域の子供たちの誕生日会やクラブ活動の打ち上げ、乳幼児連れのファミリーイベント、小さな結婚式や法事の席としても使えそうです。お茶を飲みながらの読書会、囲碁クラブのほか、テーブルを畳んでしまえばヨガなどのスタジオとしても利用できます。

「やりたいことはあるけどスペースがない」という方、一度、たまよんに問い合わせてみては? 世田谷に生まれたこの画期的な取り組みの2年目3年目を彩るのは、「たまよんサロン」に出入りする地域の人々なのです。

重度障がい者サポートの取り組みを広げたい

速水さんもスタッフの伊藤さんや田中さん(左写真)も「たまよんのような取り組みを広げたい」と口を揃えて語っていました。重度の障がいを持つ方の自立をサポートする公的なグループホームの数はまったく足りていません。民間が主体となるシェアハウス型にしても、全国的に見ても数は限られています。「もっと多様な暮らしの場が広がってほしい」と速水さん。「世田谷区内だけでも5万戸以上あるという空き家※2を有効利用できないか…共に知恵を出し合い、行動してくれる仲間を求めています。障がいのある方が安心して暮らせる場を増やすことは地域全体の豊かさにもつながります」とのことでした!

※1 出典:東京シェアハウス編集部 https://story.tokyosharehouse.com/jpn/235

※2 出典:住宅・土地統計調査(総務省)www.city.setagaya.lg.jp/documents/3883/keikaku.pdf

名称
たまよんガーデン・コミュニティ
所在地
東京都世田谷区玉川4-38-2

この記事を書いた人

こじまゆうこ

祖師谷在住。元雑誌編集者。ライター兼翻訳者。
二子玉川には自転車でよく出かけます。夕方にふたこから祖師谷方面への坂を立ち漕ぎで登っている50代女性を見かけたら声をかけてください。
ちょっと離れたところに住んでいるからこそ見えるふたこ界隈の魅力を見つけてお伝えしつつ、二子玉川、ひいては世田谷にハマりたい。