「災害に強いまちを目指す!」SDGsワークショップ 参加レポート

 「台風19号を経験して、災害に強いまちを目指す!(2019年12月22日)」というテーマのワークショップに参加しました。主催は、厳網林教授(慶應義塾大学)と小堀洋美特別教授(東京都市大学)主導で、東急電鉄、玉川町会、NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク、(社)生物多様性アカデミーが共同で運営する「二子玉川生態系サービス見える化プロジェクト」。

 今回の学びは、多摩川に隣接する二子玉川周辺地域をモデルに、台風を経験したさまざまな立場の人々が知恵を出し合って、研究者とともに「災害に強いまちづくり」について考えるという趣旨。参加者は23人ほど。同年1月に参加したワークショップに続き、今回も地域市民の一人として振り返ってみました。

今回のイベントフライヤ
兵庫島公園にて「外水氾濫」状況の学び

 午前中は夢キャンパスを出て、まずは徒歩にて多摩川河川敷の世田谷区立兵庫島公園付近を視察。台風当日は地元のリーダーとして奮闘された中村輝之(玉川町会事務局長)を先頭に、台風19号に襲われた多摩川河川敷の状況と浸水した近隣の建物を視察しながら2019年10月12日当日のことから振り返りました。台風後初めて訪れた参加者は、砂に覆われた河川敷の様子や周辺家屋の変貌ぶりに驚き、夢中でシャッターを切っていました。その後、公共バスを利用して玉堤方面へと移動。

外水氾濫地域のモデル、兵庫島付近を視察
玉堤付近にて「内水氾濫」を経た状況を視察

 この地域での内水氾濫は野毛付近の状況も深刻でしたが、今回はプロジェクトメンバーも関係する東京都市大学世田谷キャンパスの被害も甚大だったこともあり、玉堤付近を視察しました。

公共バスにて玉堤に移動。到着後、小堀洋美特別教授(東京都市大学)による案内
内水氾濫による甚大な被害を被った東京都市大学図書館付近

谷沢川と丸子川の合流地点

 谷沢川と丸子川の合流地点を視察しました。用賀から等々力渓谷に流れる谷沢川は、渓谷を通り多摩川へ合流しています。その多摩川へと合流する手前で丸子川と十字状に交差。川と川の交差の構造は、丸子川はここで終わり、一度谷沢川と合流して多摩川へ流れ込みます。そして、再度ポンプによって水をくみ上げて丸子川の下流へと流しているようです。地元の人にはよく知られていることですが、地図上で見る限りなかなか理解しにくい構造が、当日の視察でイメージ可能になりました。

谷沢川から汲み取られ丸子川に排水されてる地点。当日は水量が少なかったからか、いつものような水の流れはありません
この地域の内水氾濫

 この地域は今後の内水氾濫を視野に、東京都が数年前より地下の分水路工事を進めています。今回の内水氾濫でもポイントになった地点のようで、初めてこの周辺を視察した私は、午後の横田樹広先生の講演内容とつなげることで、やっと理解できました💦

東京都が着手している分水路トンネル工事の現場
午後のワークショップにて横田先生が、谷沢川と丸子川の交差地点と建設予定の地下放水路の位置関係を、分かりやすく地図に落とし込んでくれました💛

★詳しくは↓

東京都ホームページ(都政情報より)

災害に強いまちづくりとは

 昼食後は、東京都市大学二子玉川夢キャンパスにて4人の研究者が、主に「災害に強いまちづくり」に繋がる知見を話題提供。

 最初はプロジェクトリーダーの厳網林教授(慶應義塾大学環境情報学部)より。参加者誰もが記憶に新しい台風19号に関して、多摩川周辺にもたらした影響の分析から、二子玉川を一つのモデルに災害に強い都市の水と緑のインフラの在り方について話されました。

厳先生による話題提供
厳研究室でまとめた「二子玉川都市緑書」。二子玉川に特化したグリーンインフラの現状、歴史、課題などが分かりやすく記された冊子です。FFB(二子玉川ファンベース)にて閲覧可能

横田研究室の提案

 次の話者は横田樹広准教授(東京都市大学環境学部)。午前中のフィールドワークを受けて、内水氾濫に関する課題と、その対策に有用と考えられるグリーンインフラの活用術を提案されました。

◆台風19号と玉堤の内水氾濫

・今回の台風で、35万トン?の雨水が流下してきたと言われているのがこの地域。本来だと雨水管から多摩川に排水されるはずの水が、多摩川の増水によって水門を閉じなくてはならず、さらに上からの雨水が流入してあふれ出した。

世田谷区の住民説明会では、等々力の水門(樋門)が閉められず多摩川の水が下水に流入したことと、水門を閉じ排水能力が低下して内水氾濫が生じたことによるとされている。

・今回一番のネックになったのが水門で、閉めないと多摩川の水が流入してしまう氾濫リスクがあるし、閉めると内水氾濫のリスクが高まるという状況だった。水を出すという人為的コントロールがうまくいかないと下水の中に水が溜まり、マンホールなどからも水が吹き出し内水氾濫となったと考えられる。

・この付近の地形は崖線沿いの台地上の方は水害が少なく、各所に谷が入っていて(高低差は20m)、水が坂道沿いの雨水管に流れ込んだと考えられる。

・視察した通り、東京都が大きい放水路を建設中だが、「まますます水門に負荷がかからないだろうか?」「結局、一か所で逃がしていくとか、一極集中で水を管理していく限界もあるのでは?」という心配の声もある。

◆SDGsより、災害に強いまちにグリーンインフラを!

・水循環を回復させることと、内水氾濫に対応することの両立は難しい考え方だが、両面から考えるべき時期にきている。

・今回の教訓から、この地域に周辺も含めた街に降った雨の水すべてが下水に入り込まないような「まちづくり」をしていく必要がある。防災(内水氾濫防止)と環境(豊かな生態系の維持)をどう関連づけて災害に強いまちづくりをしていくかを考えることが有効。

・SDGs11番「住み続けられるまちづくりを」という中に、「気候変動にしなやかに対応しよう」と、「誰もが安全にアクセスできて、快適に利用できる緑地を町の中に整備していこう」と記されいて、環境と防災の考え方が両立できることが国際的にも求められている。防災は防災、環境は環境となりがちだが、いかにシナジー(相乗作用)をつくっていくのかが大事。

・個人ができる具体策は、庭や屋上の緑化など。グリーンが水を吸収すれば、例えば、今回流入した35万トンもの雨水すべてが下水に流れこむことが防げる。この対策を1軒だけでなく、多くの地域住民が試みるようになればかなりの効果が得られるはず。災害に強いまちづくりの第一歩になるだろう。

多摩川沿いの低地と国分寺崖線の上の地域の高低差は20m。横田先生は、横田研で研究している、その坂道を流れる雨水の量を削減する具体策を提案されました
咸研究室の提案

 咸泳植研究室の有賀康博さん(東京都市大学環境学部)より、「多摩川の水辺の外来植物調べ」の研究発表後、咸泳植准教授(東京都市大学環境学部)による「川、みどりの活用や管理の視点から、水害後の在り方について」の話題提供がありました。

咸先生による話題提供
参加者のアウトプットと学び合い

 A,B,C,Dの4グループに分かれて参加者によるアウトプットと学び合いの時間です。主催者より班別に2方向の「問」が示され、2ラウンドに分けて取り組みました。

◆第1ラウンド
問:災害の対応と情報について。台風19号でどのような経験をしましたか?
A,B班のミッション(主に行動を伴うソフト面をディスカッション)
問:午前のフィールドワークで発見したインフラをマップに書き込んでください。
C,D班のミッション(インフラ関連のハード面をディスカッション)
第2ラウンド
問:台風19号の対応で、うまくいった所とうまくかなかったところは?
  それはなぜですか?
A,B班のミッション(主に行動を伴うソフト面からディスカッション)
C,D班のミッション(インフラ関連のハード面からディスカッション)

「内水氾濫地域」と「外水氾濫地域」に分けてインフラを書き込もうと話し合うC班
ソフト面をアウトプットするB班。町側のリーダーとして台風当日の二子玉川ライズと消防団の対応について発表する笠原徳広さん

ワークショップを終えて

 昨年1月のワークショップでは、二子玉川周辺の生態系サービスを幅広い視点で視察しました。今回は、台風19号による外水氾濫と内水氾濫の爪痕を視察するという視点が絞られたワークショップでした。水害という観点からこの地域の現状と課題を洗い出し、今後自分たちが個人で改善できること、または地域ぐるみで取り組むべき方向性、さらにはそれが地球環境をサスティナブルなものにするための知見につながれば、という期待を持って参加しました。何人か参加された市民の方にも感想を聞いてみましたのでご紹介します。

*当日は楽しかったが、学びとしての印象は明確には思い出せない。良かったのは、横田先生の話題提供と学び合いの場で、玉堤の内水氾濫に関して午前のフィールドワークとつなげて話してもらえたこと。防災とグリーンインフラに関する研究も興味深かった。

*初めて参加したけれど、二子玉川で実施しているこのプロジェクトの研究目的の中で、今回のワークショップがどう位置づけられているのかが見えなかった。研究者が市民から得たいこと、研究者が市民に提供できる知見との関連などがワークの中で読み取れる設計になっていればもう少し能動的に参加できた気がする。

*午後のワークショップで参加者に示された問いのデザインから、このワークショップのゴールイメージが共有できなかったために、議論が深まらず散漫になった印象がある。

*研究目的がそれほど近くない研究者が話題提供されるワークショップだと参加者としては、どの学びを持ち帰ったらいいのか迷った。フィールドワークでの視点も少し散漫になった気がする。

*町にとっては生態系サービスに限らずインフラという視点でいえば、地域の課題、例えばユニバーサルデザインが反映されている場所なども同時に見える化できると便利なので、そういう研究室とも協同でワークショップを展開しても良いかもしれない。

*水害に関する勉強会はこの地域でも複数実施されている。(例えばソフト面で地域での災害当日の声掛けや避難誘導や判断、日ごろからの人脈づくりの課題などをテーマにした学びなど)。だから、インフラ系の研究者との学びでは、「災害に強いまちづくり」をしていく上で長期的な観点からハード面のインフラ対策などに絞った学びの場に集中した方が市民には得ることが多いように思う。

記者より

 コメントは限られた方々からいただいたもので、少し辛口だったかもしれません。私はサイエンスコミュニケーターの活動の中で、研究者の知人も多く、研究者のご苦労はある程度理解しているつもりです。だからこそ、市民と研究者の双方にとって有益な学びの場をつないでいければという思いもあります。今後は、研究者と地域市民、さらに行政も交えた学び合いの場に発展できれば、双方にとって有益に違いありません。そのためには、市民側も能動的に研究者と対話を重ね、協同で学び合いのプログラム設計をしていくことも必要かもしれません。この地域で得られた研究成果(今回でいえば厳研究室制作の「二子玉川都市緑書」や、横田研究室の「雨水を吸収するグリーンインフラの効果」など)や、ワークショップで学んだ知見が、例えば、町に農園を造る、住居を選ぶ・建てる、庭をリノベーションするなどの状況が訪れ、様々な選択や判断が必要になった時に役立てば最高です。さらに、その結果が「災害に強いまちづくり」×「環境保全」の一つのモデルになり、ひいては「地球全体の環境保全」に役立つ研究成果につながるかも……なんて考えるとワクワクしてきます。

 この地域を選んで研究してくださる研究者の皆さんに感謝しつつ、今後の学び合いが双方にとってさらに実りあるものにしていきたいという願いを込めて、今回の学びを報告させていただきました😊

 

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この記事を書いた人

牟田由喜子

牟田由喜子

瀬田に移り住んで約20年。とはいえ二子の魅力をしみじみ感じだしたのはここ数年。『地域でいろんな世代が集う場づくりプロジェクト』でサイエンス・ワークショップをやらせてもらったり、ぬくぬくハウスサテライトで展開中の『アート&サイエンス&読み聞かせ』のワークショップではサイエンス部門を担当。要は、地域の魅力をサイエンティックな視点で愛でつつ、みんなで楽しく語り合いたいんです(^^♪
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