世田谷区の都市再生推進法人である(一社)二子玉川エリアマネジメンツは、国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所および世田谷区と連携し、地域の自然資産であり、人々の大切な憩いの場である多摩川の治水対策に伴う工事状況などについて、「二子玉川 水辺まちづくりレポート」で地域の方々へ正確な情報をタイムリーに紹介しています。(過去の水辺まちづくりレポートはこちら)
大正時代から地域に親しまれてきた多摩川旧堤防
地域の桜の名所として親しまれ、futakolocoでもこれまでに何度も紹介されている「玉川陸閘(りっこう)」(過去の関連記事はこちら)。陸閘(りっこう)は、多摩川の水害から暮らしを守る目的で大正時代に作られた堤防の一部を削り、堤防内外への通路としたものです。
この通路は、増水などにより川の水位が上昇した際に、手動で門扉のように締め切り、水が堤防の外(多摩川河川敷外)へ流れ出るのを防ぐ仕組みとなっていました。陸閘は玉川1丁目に2か所あり、それぞれ「西陸閘」「東陸閘」と呼ばれ現存しています。レンガ造りの壁が印象的です。
旧堤防は、完成時の昭和8(1933)年には河口から「二子の渡し」付近まで約22kmあったそうです。現在の二子玉川では、玉川1丁目から3丁目の多摩堤通り沿いで「土手」としての存在を感じることができます。
毎年行われている玉川陸閘閉鎖訓練
さて、こうして古くから地域の人々の生活に寄り添ってきた堤防と陸閘ですが、現在でもその機能を担っています。毎年、出水期前の5月に閉鎖訓練を行い、閉鎖に必要な材料等が損傷・腐食していないかを点検すると同時に、設置から撤去までの作業と時間の確認が行われています。
この訓練は世田谷区の職員が作業し、実施について国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所へ報告されます。訓練を担当する世田谷区玉川土木管理事務所の高橋厚信所長は、「台風などによる増水で、浸水の危険がある場合に速やかに閉鎖し地域を災害から守るための訓練です」と話します。
2019年の10月に発生した台風19号が飛来した際には、西陸閘を閉鎖しましたが、街に古くから住む方々は「訓練ではなく、水害防止のため実際に閉まるのは初めて見た」と話していました。
閉鎖訓練は5月10日(月)午前10時から始まりました。まず西陸閘、次に東陸閘という順番で行われました。
西陸閘(幅3.5メートル、高さ2.3メートル)の閉鎖作業時間は約5分。トラックに積載された角材19本を7-8人の職員で運搬し、積み上げました。
一方の東陸閘(幅5.5メートル、高さ2.7メートル)は、西陸閘よりも開口幅が広いため、角材42本を横2本に並べて積み上げる必要があります。そのため、作業時間には約10分を要しました。
また、角材を支えるためにつっかえ棒をするのですが、棒を固定するための穴は、通常時はアスファルトコンクリートで埋められています。これを剥がす作業にかかる時間も、作業時間が長くなる理由です。
作業はお昼前には終了し、あっという間に原状回復されました。途中の作業については通りがかりの人や、近くのオフィスビルで働く方々が物珍しそうに見学していました。陸閘自体についても知らない方が多く、この丘が多摩川の水害から街を守っている堤防であるということにも驚かれていました。
京浜河川事務所のサイト内「多摩川の見どころ」ページで多摩川旧堤と陸閘が紹介されています。ご関心の方はぜひお読みください。
- 名称
- 玉川陸閘
- 所在地
- 世田谷区玉川1-8付近