多摩美術大学「上野毛 夏宵祭」学生と地域の輪広がる 祭り実行委員長にインタビュー

多摩美術大学上野毛キャンパスで8月1日(土)〜3日(月)、キャンパスと街をつなぐ「上野毛 夏宵祭」が開催されました。今年のテーマは「大わっしょい」。学生の「つくる力」と地域・企業の協力が重なり、世代を超えた交流の輪が広がりました。当日の様子とともに、企画を立案した実行委員長・長枝昂市さんに、開催までの背景と今後への思いを聞きました。

企画を立案した実行委員長・長枝昂市さん

90年を超えるキャンパスを地域に開く

上野毛キャンパスの歴史は、前身の多摩帝国美術学校が現在の上野毛に開校した1935年に始まります。2026年4月には、本部棟と講堂からなる新校舎の利用を開始。今回は、この新たな空間も会場となりました。

夏宵祭初日のキャンパス正門(8月1日)

会場には、学生が企画した屋台やワークショップ、ステージが登場。学生や地域の出店者による飲食・物販のほか、うちわや空間をデザインするワークショップなどが行われました。美術大学らしくデザインされた、団扇付きのパンフレットも来場者の目を引いていました。

中庭では、オリジナル盆踊り「上野毛ぽっちょん」「本家上野毛音頭」などを披露。「上野毛ぽっちょん」は本條秀太郎さんが作詞・作曲。「本家上野毛音頭」は統合デザイン学科の長崎綱雄教授が作詞し、演劇舞踊デザイン学科の近藤良平教授が作曲と振付を手がけました。学生たちが踊りの輪をつくり、参加者も加わって、今年のテーマ「大わっしょい」を体現する時間となりました。

画像提供: 多摩美術大学

新校舎のOculus Hall(講堂)では、トークやレクチャー、ノイズ・ミュージックの源流となる騒音楽器「イントナルモーリ」を用いたコンサートとシンポジウムも開催。本部棟地下1階のMaglaboでは、オーディオビジュアルパフォーマンスが展開されました。

期間中は「夏のオープンキャンパス in 上野毛」も同時開催され、作品展示や進学相談、新校舎見学ツアーなどを通して、来場者が大学の学びに触れました。

一人の学生の発案から約110人の実行委員会へ

発起人で実行委員長を務めたのは、多摩美術大学統合デザイン学科3年生の長枝昂市さんです。

長枝さんは以前、三重県の集落で社会活動プロジェクトに参加しました。地域住民から「大切な街の思い出」をテーマに写真を募ったところ、寄せられた写真には祭りの光景を収めたものが多く、人をつなぎ、思い出や文化を受け継ぐ祭りの役割と価値に関心を持ったといいます。

多摩美術大学入学後、1年生の時に、地域と学生をつなぎ、学科の垣根も越える交流の場をつくりたいと考え、統合デザイン学科長のもとへ一人で企画書を持参。2025年夏、試験的な小規模イベントとして実現しました。

新校舎の利用が始まった今年は、地域との連携を本格化させました。長枝さんが商店街振興組合 上野毛商和会の事務所を訪ねたことをきっかけに、地域団体や行政、企業へと協力の輪が広がったといいます。

商店街振興組合 上野毛商和会、世田谷区 上野毛まちづくりセンター、公益財団法人世田谷区産業振興公社、東急電鉄株式会社などが協力し、公益財団法人 五島美術館と株式会社ジーユーが協賛。長枝さんは、こうした地域や行政との連携が、今年の来場者の増加につながったと話します。取材時点の開催2日目で、来場者数は目標としていた2,000人を超えたそうです。

実行委員会も、前年の約70人から約110人に拡大しました。企画、デザイン、会場運営などを担う複数のチームに分かれ、それぞれの学生が専門性を生かして準備を進めました。

長枝さんは、自身について「組織づくりが特別に得意なわけではない」と話します。一方で、学生同士の距離が近い上野毛キャンパスの一体感と、ゼロからものをつくろうとする学生が集まる環境が、多くの有志の参加につながったのではないかと振り返りました。

踊りをきっかけに周辺地域との連携も

長枝さんは、今後は上野毛にとどまらず、二子玉川や尾山台などの周辺地域、他大学、企業との連携も視野に入れています。

取材を通じ、盆踊りには、言葉だけでなく身体で覚え、一緒に踊る交流の手段として、地域同士をつなぐ可能性があると感じました。今年披露されたオリジナルの盆踊りが、今後地域の中でどのように受け継がれ、広がっていくのかも注目されます。

現在3年生の長枝さんは、来年以降の運営を後輩へ引き継ぐことも見据えています。ただし、自分たちがつくった形をそのまま踏襲してほしいとは考えていません。「多摩美術大学の学生は、ゼロからものづくりを考える人が多いからこそ、後輩たちの創造力に任せたい」と話していました。

当日会場で配布されたパンフレット 美大ならではの機能的なデザイン!

新校舎の完成とともに、地域に開かれた交流の場として新たな歩みを始めた多摩美術大学上野毛キャンパス。学生一人の発案から始まった夏祭りが、大学と街の関係をこれからどのように育てていくのか、引き続き注目したいと思います。

関連記事・参考リンク

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上野毛 夏宵祭 公式サイト

多摩美術大学 公式サイト

名称
多摩美術大学上野毛キャンパス
所在地
東京都世⽥⾕区上野⽑ 3-15-34

この記事を書いた人

こばなお

futakoloco 編集長&ファウンダー。二子玉川在住23年。主に公民連携分野のフリーランス・ライター/エディター。法律専門書出版社勤務と米国大学院留学(高齢化社会政策)を経て、2016年〜2022年、自らの暮らしの場である二子玉川のエリアマネジメント法人で情報・広報戦略と水辺などの公共空間における官民共創事業に従事。(プロフィール似顔絵 by PONちゃん!)

最近は生まれ育った西多摩の多摩川・秋川の水辺や、第2の生活拠点である隅田川水辺界隈でもじわりわくわく活動中!