【特別寄稿】瀬田玉川神社シリーズ:瘡守稲荷神社 #6 鎮守の杜をモデルとした森作り(SDGsの森作り)②

【特別寄稿】瀬田玉川神社シリーズ:瘡守稲荷神社 #5 鎮守の杜をモデルとした森作り(SDGsの森作り)① はこちら

6. 第二のふるさと創生協会・鎮守の杜をモデルとした森作り(SDGsの森作り)②私たちの生活と命を守るための森の活用

 私がこれまで取り組んできた東北沿岸に植樹した森の防潮堤は、津波を減災するために築いたものです(例:宮城県岩沼市「千年希望の丘」)。

 東日本大震災の津波で、私の生まれ故郷の岩手県陸前高田市にあった7万本の松林は、たった1本しか残りませんでしたが、その一本の松は「奇跡の一本松」と呼ばれるようになりました。それだけ松の単色林は、大きな津波には弱いという結果です。

 瀬田玉川神社の近くを流れる多摩川でも、昨年秋に大きな洪水が発生しました。河川敷も野球場やサッカー場など大変な被害がありましたが、あの濁流の中にあって、いつもとかわらずそこに立っている木々や植物があることに、お気付きの方はいらっしゃいますか。そうした木々を私たちの生活空間の中に、適宜適所にもう少し増やすことができれば、いざという時の減災に役立ちます。

元々奥山にあった木。中央の森だけ土砂崩れでも被害がなく残った(画像:第二のふるさと創生協会)

 山では奥山が回復すれば、山の保水力が上昇し、里に洪水や土石流をもたらすことも減少します。山崩れを起こしている場所は、ほとんどが単色林の場所でもあります。

 新潟や熊本などの大きな地震の後の調査では、建物や石碑やブロック塀は崩れても、木々や家の周りの垣根はいつもと変わらない姿をしていました。

熊本地震でブロック塀が倒れたのにも関わらず、生け垣は地震前と変わっていない(画像: 第二のふるさと創生協会)

 関東大震災では、森のない大きな公園などに逃げた人の多くが、火災旋風で命を落としましたが、現在の江東区・清澄庭園に逃げた人たちは、周囲の森が火災旋風の壁となり亡くなった人はいませんでした。この森が火を止める効果は、阪神淡路大震災でも同様の事例があります。

 すなわち、森林は何百年前から、既に何度も災害を経験済みであり、「災害を織り込み済みで、乗り越える力がある」から、そこに存在しているのです。

 当協会では、この「鎮守の杜をモデルとした森作り(SDGsの森)」を、私たちの生活を豊かに安全にするものとして、また自然と人間の営みの程良いバランスを調整する存在として、適宜適所に植樹活動を行いたいと考えています。

 そして、この植樹活動は、それぞれの地域に元々存在していた植物による生物多様性の森を作ることであり、日本だけでなく、大きな山火事のあったオーストラリアや焼畑農業で急速に失われるブラジルのアマゾン原生林、日本企業もパルプ生産のため伐採したインドネシアの原生林などの回復のため、有効な植樹方法と考えます。ドイツでは、とても進んでいる植樹方法なんですよ。

植樹祭(画像:第二のふるさと創生協会)

 森林が回復すれば、動物も豊かに暮らすことができ、人間も自然の恵みを享受することができ、そこに独特の文化が生まれます。まさに、この日本の知恵から始まる森こそが、SDGsの森であり、人間がバランスを崩し侵さない限り、持続可能な森となります。

 実は、二子玉川でも2012年にこの森作りをした場所があります。二子玉川公園内のスターバックスの近くで、周辺の木々とは明らかに違うこんもりした森に育ってきています。

二子玉川公園内の「世田谷 いのちの森」(撮影:小林直子 2020年4月15日)
二子玉川公園内の「世田谷 いのちの森」に設置された説明プレート(撮影:小林直子 2020年4月15日)

参考資料:

世田谷区立二子玉川ビジターセンター公式サイト世田谷いのちの森(園内マップページ)

二子玉川公園で「いのちの森」お手入れイベント 30年後見据えた除草と成長調査 (2015.6.11 二子玉川経済新聞)

 植樹から8年でここまで成長したのです。こうした森が、私たちの生活の周辺にも、もう少し多く存在すれば、災害時にはとても有難い存在になります。

 残念ながら都会の中では、植樹する場所はなかなか確保することは困難です。瀬田玉川神社でも瘡守稲荷神社でも、都内の中で鎮守の杜を維持していくことは、多くの困難があります。参拝者や周辺居住者に被害が無いように樹木の剪定をすれば多額の経費がかかる一方で、剪定したら自宅に光が差し込み過ぎて「光害」になると言われたりもします。

「鎮守の杜の守り人」の取り組み:神さまと海と森の教室

 動植物にとっても住みにくい都会の環境かもしれませんが、「鎮守の杜の守り人」であることを神々から委託されている神職にとっては、この都会のオアシスを維持していく使命があります。

 せめてものことですが、こうした森の大切さ、自然やその恩恵を得て生きることができる私たちの命の大切さを子供たちに伝えるために、瀬田玉川神社ではこの鎮守の杜をフィールドにして「神さまと海と森の教室」も開催しています。毎年、futakolocoさんにもご協力いただいています。

関連記事:

【子ども特派員レポート: Kai #8】今年も瀬田玉川神社「神さまと海と森の教室」を取材!

瀬田玉川神社「神さまと海と森の教室」の様子・中央は講義をする高橋禰宜(撮影:小林直子)
瀬田玉川神社「神さまと海と森の教室」の様子(撮影:小林直子)
瀬田玉川神社「神さまと海と森の教室」の様子(撮影:小林直子)

 お話がそれましたが、「鎮守の杜をモデルとした森作り」は、全国で推進していきますので、一般社団法人第二のふるさと創生協会の活動に、ご興味がある方、一緒に活動していただける方は、ぜひご連絡ください(全国お祭り手伝い隊登録フォーム)。

 新型コロナウイルスが終息しましたら、このプロジェクトに親しんでいただくための「鎮守の杜でのフィールドワーク」などの勉強会も開催します。一緒に、ワクワクしながら、楽しく、世の中のためになることが出来る仲間を募集しています。

マスク姿の狛犬さん(瀬田玉川神社 2020年4月10日)
鯉のぼり(瀬田玉川神社 2020年4月10日)

(連載了)

文責 瀬田玉川神社 禰宜 高橋知明

 

名称
所在地

この記事を書いた人

特別寄稿