【レポート:世田谷美術館「エリック・カール展」】♯2

「生きることはアート」といつも思っています。この展覧会はそのことを再認識させてくれるものでした。子どものアトリエを10数年開催していますが、私は専門的に絵や造形を学んだことはなく、専門(というほど造詣は深くないですが)は社会学。二人の子どもを産み育てている時に、社会を作っている基盤は子ども達であり、その子ども達の毎日はまさにアートだと思い、子ども達が自然に自由に作りたいものを作るアトリエを開設する勉強をして、今も続けています。
その人の思いの表現こそがアート。まさに、生きることはアートなのだと、87歳のカールさんの160点の作品一枚一枚、ダミーブックの絵の具の一色一色が語りかけてくるようでした

カールさんは、ご自分の子ども時代の体験から、今の子ども達の助けになるように作品を作り続け、おじいさんになったのです。そのことが、この展覧会ではよくわかります。

今の日本のお母さんたち(お父さんも?)は、エリックカールさんの「はらぺこあおむし」のことは知っているし、きっと子ども達に読んで聞かせてあげているでしょう。そして、この展覧会を子ども達と一緒に観られたらいいな、と思っている方も多いのではと思います。

でも、この展覧会をお子さんと一緒にご覧になろうと思ったら、2回くる覚悟が必要です。(もちろん、2回来てもいいと思います。お財布が許せば・・)あるいは、小学生であれば、一緒に入って、子ども達は好きなところを見てあとは砧公園で遊んでもらい、親御さんはゆっくりとご覧になるのがいいと思います。小さいお子さんなら、ご夫婦や、お友達同士で交代で公園で子どもを遊ばせながら、ゆっくりとご覧になることをお勧めします。みどころはたくさんあり、じっくり見れば、2時間かかります。子ども達の集中力は長くて20分。最初のうちは観ていても、すぐに美術館の中を走り始めます。それは当たり前のこと。子どもですから。

展示室の外には、絵本が並んでいるコーナーや、フォトスポットもあります。緑豊かな砧公園もあります。カールさんはアメリカニューヨークのシラキュースで幼い頃を過ごし、それは幸せに満ちたものだったそうですが、中でも昆虫や動物たちを探して森の中を父親と一緒に歩いたことが一番の思い出だそうです。その幸せだった時間を、小さな生き物たちを描くことでもう一度取り戻している、と。小学校へあがるとき、アメリカからドイツへと転居し、困難を迎えたカールさん。その時期の子ども達の助けになればと願い、絵本を描いてきたそうです。青年期は戦時下で辛いことも多かったであろうカールさんを支えたのは、幼いときの幸せな思い出だったのではないかと思います。

さて、この展覧会の開会式にあたり、二人の館長さんのお話しを聞くことができました。

世田谷美術館の館長さんは「知ることも大事だけれど、感動はもっと大事。一人の人より、多くの人に伝わることによって、感動はもっと大きくなる」というお話しをされました。

アメリカのマサチューセッツにあるエリックカール絵本美術館の館長さんは「絵本には、美術とテキストがあり、小さな子ども達にも『自分がだれなのか、私たちはどんな世界に生きていたいのか』を教えてくれる」と。

世田谷美術館とエリックカールと砧公園。ここに住んでてよかったな。

カールさんの後ろにあるのは、オペラの舞台装置になった作品(撮影こばなお)

この記事を書いた人

ゆか

サラリーマン時代に東急ハンズ玉川店、玉川高島屋を担当し、ここいら辺が気に入って移住。岡本の坂下に住み、母となり産んだ子どもたちはもうオトナ。2005年から鎌田で「子どものアトリエ」を始め、2016年に大蔵5丁目「ゆいまあると3つの磁石」という場を開設、「子どものアトリエ」「映画とキャラメル」など、よくわからないことを展開。2021年、岡本から玉川4丁目の空き家(通称たまよん)に1年間入居。2023年、「ゆいまあると3つの磁石」近くに建った家に転居、「あめます舎」と名付けて家開きしている。NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク所属。