【生きることはアートだ!21】2024タマリバーズvol.13広場演劇「ミテル?」

 昨年の夏に二子玉川から少し奥まった大蔵に引越しをしました。ちょっと二子玉川から距離ができてしまいましたが、二子玉川ライズの広報担当さんから今年の地域連携アートプロジェクト「タマリバーズ」ついてお知らせをいただいたので、10月12日(土)13日(日)の2日間(全6回)の公演のうち、 12日の13時30分からの回を取材してきました!

タマリバーズプロデューサーの松田朋春さんへインタビュー:多摩美術大学のPBL(Project Based Learning)とは

 13時ごろ会場についてウロウロしていると知った顔を発見。毎年、この「広場演劇 タマリバーズ」の制作に関わっている松田朋春さんです。お久しぶりですが、お声をかけてみました。

 最初に「今回の見どころは?」と質問をしたら、「ミュージカルとイリュージョン。イリュージョンを何回かやってみてますが、毎回成功して、ちゃんと人が消えてます(笑)」とのこと。そして、「松田さんは、どんな役割でこの公演に関わっているのですか?」と伺うと、ていねいに答えてくださいましたので、以下ご紹介します。

 この「広場演劇タマリバーズ」は、多摩美術大学の「PBL(Project Based Learning)」という特色のある科目のひとつで、所属学科や学年の枠を超えて、横断的研究や社会的課題に取り組むプロジェクト型授業(詳しくはこちら:大学公式サイト)。全学科、全学年の学生が履修でき、単位取得も可能。

 タマリバーズは上野毛キャンパスの演劇舞踊デザイン学科と統合デザイン学科が手掛けていて、産学連携型授業として多摩美術大学と東急株式会社が共同展開しています。上野毛キャンパスに近在する東急二子玉川ライズを拠点に、2011年から続いています。毎年60人くらいの学生さんの参加があり、1人の教授と4人の専門分野の講師で授業を進めています。松田さんは専門講師として「プロデュース」を担当していらっしゃるそうです。

 そういえば、松田さんは2016年に二子玉川の水辺エリアで開催されたアートフェスティバル「TOKYO ART FLOW 00」のアートプロデューサーで、その時に初めてお会いしたことを思い出しました。松田さんは、当時私のご近所さんで、息子さんは私の主宰する子どものアトリエに来てくれたこともあり、今は、アートプロデュースや詩作だけでなく、地元でパン屋さんをやっていたりする方です。

 「プロデュース」と言えば、制作の全体統括のイメージ。それを学ぶ授業があるのかと、美大の奥深さを垣間見た気がしました。この世には本当にいろいろな学びがあるのだなあ。

「創り手と受け手、双方の懸命さ」がアート

 私が、地方から東京の大学を目指したのは、まだインターネットなどのない昭和でしたし、自分の通っていた高校がいわゆる進学校ではなかったので、教室の片隅にそっと並べられた大きな大学便覧のような本のページをめくり、その説明とそこに書かれた偏差値を読んで、志望校を決め願書を提出する、という感じでした(地方では「女の子は大学なんかに行かなくてもいい」などと、普通に言われる時代でした)。当時の私には「美術を大学で学ぶ」という発想は全くなかったなあ・・。

 私の時は試験日に合わせて上京し、入試当日に初めて志望する大学を訪れるというスケジュール感。十数年前(平成ですね)、自分の2人の子どもの大学受験に際して、「オープンキャンパス」というものに行く機会がありました。ネットでの情報収集とともに、こういう機会もあるのだな、ということと、実際に自分も参加してみてなんだか、大学というところが「就職」に向けての専門学校みたいになっているところも多いのだなあ、と感じました。

 長女はいったん入った大学を辞めて海外の大学に行き卒業しましたが、ものづくりが好きで音楽をやっていた次女には「美大とか音大に行ったら?」と言ってみたのですが「それは趣味だから」と一蹴され、結局、私が美大に深く関わる機会はありませんでした。でも、このタマリバーズを観ると、いつも「美大っていいな」と思います。なんだか、「好きなことを思い切りやっている」感じがするからかなあ?

 今回のタマリバーズも例年どおりすごく素敵。歌も上手だし、身体能力の高い役者さんのパフォーマンスも、衣装も構成も大道具のクオリティも高く、ほんとうにイキイキと演じているみなさん。これをだれでもが、ひろばで楽しめるという点からも「タマリバーズバンザイ!」と思ったのだけど、それ以上に興味をひかれたのは、熱狂的な「タマリバーズ ファン」の登場。

 私が、松田さんから一番イリュージョンが楽しめる場所、と聞いて陣取ったすぐ隣にいた女子高校生とおぼしき二人組が、いわゆる「黄色い声」をあげながら、出てくるキャラクターに手を振ったり、大興奮。ああ、そういえば、私もあんな風に声援を送っていたことがあるかも?とちょっと若かりし日を思いだしたりもしました。

パフォーマーのひとり(ポロンちゃん?)が声援を送る二人のもとに、何かを渡しました。受け取って興奮する二人に、「何もらったの?写真とっていい?」と撮らせてもらいました~ハッピーのおすそ分けをもらったきぶん

 上演後、少しお話しを聴いてみると、二人は高校生で一人は地元、もう一人は、少し離れた地域に住んでいるのだけど、前日のリハーサルをたまたま見て「ハマって」しまい、土曜日も11時の回、13時半の回と観覧、この後も見て、明日もまた観に来る、とのこと。す、すごい。

 やはり、表現は、創り手と受け手の相互作用によってより素敵なものになっていくもので、その高まりは「生きる」原動力になり得るだろうな、とひさびさの二子玉川で感じいり、また、創り手、受け手双方の懸命さに胸を打たれたのでした。

 誰かを熱狂させる、誰かを幸せな気持ちにする、心をゆさぶる・・・、それって何かに懸命にとりくむことでできるのかもしれないな。そして、そういうことこそがアートな気がする。

 来年もまた、この場所で、「広場演劇」が観られたらいいな~。

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名称
二子玉川ライズ ガレリア
所在地
東京都世田谷区玉川2-21-1

この記事を書いた人

ゆか

サラリーマン時代に東急ハンズ玉川店、玉川高島屋を担当し、ここいら辺が気に入って移住。岡本の坂下に住み、母となり産んだ子どもたちはもうオトナ。2005年から鎌田で「子どものアトリエ」を始め、2016年に大蔵5丁目「ゆいまあると3つの磁石」という場を開設、「子どものアトリエ」「映画とキャラメル」など、よくわからないことを展開。2021年、岡本から玉川4丁目の空き家(通称たまよん)に1年間入居。2023年、「ゆいまあると3つの磁石」近くに建った家に転居、「あめます舎」と名付けて家開きしている。NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク所属。