【メディコロコシリーズ】#1 玉川病院で乳がん検診「ピンクリボンサンデー」 大石陽子先生インタビュー編

二子玉川のまちメディア「futakoloco(フタコロコ)」では、ロコ目線で医療に関するレポートをお届けしてきました。医療を仕事や遊び、学びと同じように、暮らしと共にある存在として紹介してきましたが、この思いをさらに深め、地域医療と暮らしのつながりを実感できる特集シリーズ「medicoloco(メディコロコ)」をスタートします。

futakoloco過去の地域医療に関する記事はこちら

「メディコロコ」では、二子玉川の街と医療が交わる場での取り組みを取材し、地域密着型のクリニックや医療サービス、健康イベント、まちの人々と医療の関わり方などをお伝えします。
医療を特別なものではなく、暮らしの一部として捉え、大好きな街・二子玉川で安心して暮らし続けられるように。この願いを込めて、このシリーズをお届けします。
第1弾では、昨年10月に実施された玉川病院の「ピンクリボンサンデー」を特集します。同院外科診療部長兼乳腺外科部長の大石陽子医師に伺った1時間のインタビューから、エッセンスと学びポイントをわかりやすくお届けします(第2弾では、フタコロコ記者による検診体験レポートをご紹介予定です)。
玉川病院入口。ロコ記者3人でインタビューに伺いました!

ピンクリボンサンデーとは?

「ピンクリボンサンデー」は、働く女性や子育て中の母親が乳がん検診を受けやすくするために日曜日に実施される取り組みです。日本ではNPO法人J POSHが主催し、毎年10月に乳がん予防と早期発見を啓発する活動が行われています。玉川病院もこの活動に賛同し、毎年日曜日に乳がん検診を実施しています。2024年は10月20日に行われ、9名が受診しました。

futakoloco ピンクリボンサンデーの記事
東京都での取り組み「ピンクリボンin東京」

乳がんは、日本女性の9人に1人がかかる

日本では、女性の9人に1人が乳がんにかかる時代となっており、女性の部位別がん罹患者数で9万1,531人(22.3%)と、最も多くなっています(2020年)。

出典:厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告 2020

大石先生は「乳がんは、早期発見・早期治療をすることでかなり生命予後を改善できる病気。だからこそ、乳がん検診が大変重要となってきます」と強調します。

大石陽子先生:玉川病院外科診療部長兼乳腺外科部長、乳腺外科一般・遺伝子診断

乳がん検診には2つの方法がある

乳がん検診には「マンモグラフィー(乳房X線検査)」と「乳腺エコー(乳房超音波検査)」の2つの方法があり、それぞれの特長を活かして診断を行います。国の指針に基づく検診は40歳以上の女性を対象としていて、問診とマンモグラフィーを2年に1回行うこととなっています。

大石先生は、「両検査を組み合わせることで、発見率を高めより正確な診断が可能になります。自治体や企業による健康診断等をうまく活用し、定期的な受診をおすすめします」と話します。また、「健康診断を待たず、乳房に関する違和感、しこりなどご不安を感じることがありましたら、おひとりで悩まずにお気軽に受診してください」とも。

世田谷区乳がん検診(公式サイト内ページ)

「ブレスト・アウェアネス」と女性の健康意識

乳がんの罹患率は30歳台後半から増加し始め、40歳台後半から60歳台後半の間に大きな山があり、家庭や社会で最も活躍する働き盛りの年代に多いことがわかっています。

一方で、検診対象年齢である40歳になるずっと前から、日ごろから自分の乳房の状態に関心をもち、乳房を意識して生活する習慣を身に着けることで、気になる変化に気づき、早期発見などの対応につなげることができます。これを「ブレスト・アウェアネス」といいます。

ブレスト・アウェアネスは、自身の日頃の乳房の状態を知る・意識することに重点を置く考え方ですが、女性はホルモンバランスの変化などにより、思春期・青年期・更年期・老年期など年齢やライフコースごとに健康課題が変わります。また、特有のライフイベントとして妊娠・出産もあります。女性が元気に活躍するために、10代の頃から自身の体を知り、変化に素早く対応する意識が大切であるということを大石先生とのお話で学びました。

とうきょう女子けんこう部(東京都サイト) 

正確な情報で知ることの大切さ

昨今はSNSなどのデジタルメディアの発達もあり、乳がんに関するさまざまな情報がインターネット上でも発信されています。一方で、大石先生は「発信する情報の正確性を確保するためには、専門機関の協力が不可欠」と警鐘を鳴らします。また、「不明な点について自己判断せず、必ず専門の医師に相談してほしい」とアドバイスされています。

世田谷区がんポータルサイト(公式サイト内)

大石先生のおすすめはこちら:

患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2023年版(日本乳がん学会サイト)

乳腺外科がつくる乳がん大事典(YouTube)

ファミリーケアプログラム

ピンクリボン運動では、乳がんになった方の手術後のケアや子育て支援のほか、家族の心のケアプログラムにも力を入れているそうです。

具体的には、お母さんが乳がんによる闘病生活を余儀なくされても、勉学には支障が出ないよう高校生を対象とした奨学金制度、シッターサポートプログラムや乳がんの手術をされた方が温泉を楽しめる環境づくりなどもあります。

乳がんに関する情報を絵本やカードにしてわかりやすく広く伝えようとする取り組みは、先ほど紹介した「ブレスト・アウェアネス」同様、がんに罹患しても動揺せずに暮らしを営める社会につながる、ということを教えていただきました。

玉川病院の検診室に置かれていたピンクリボングッズ

地域医療拠点・玉川病院の今後の取り組み

インタビューでは今後、futakolocoと一緒に地域医療機関と連携しながら、乳がん検診のためのイベントや体験型啓発活動を実施することも話題に挙がりました。

また、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大により休講になっていた「市民公開講座」が、3年ぶりに再開することが決まりました!31回目となる公開講座のテーマは「認知症~少しでもいい状態を維持するために~」で、開催日は3月7日。詳しくは以下のリンクでご確認ください。

メディコロコ学びポイント:

・乳がんは日本女性の9人に1人が罹患し、早期発見と治療で治る可能性が高い。

・乳がん検診はマンモグラフィーと超音波検査を組み合わせ、毎年の受診が推奨される。

・「ブレスト・アウェアネス」日常的に乳房の状態を意識することが大切。多忙な年代の女性こそ、自分の健康管理を後回しにせず、信頼できる医療機関での素早い受診が必要。

インタビューの様子。ありがとうございました!

名称
日産厚生会玉川病院
所在地
東京都世田谷区瀬田4-8-1

この記事を書いた人

フタコロコ編集部

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