二子玉川ライズの街づくりが「第2回先進的まちづくりシティコンペ」国土交通大臣賞を受賞

二子玉川ライズ協議会は1月30日、「先進的な技術や手法を活用した優良なまちづくり」を表彰する「第2回先進的まちづくりシティコンペ」で国土交通大臣賞を受賞しました。国土交通省は受賞者の決定と同時に3月14日(水)に表彰式や受賞者によるパネルディスカッション、島原万丈氏による特別講演など関連シンポジウムを開催することについても公表しました(シンポジウムについての詳細はこちら)。

 取組名は「二子玉川ライズの街づくり」。都心郊外部の私鉄駅である二子玉川駅の東側に位置し、国分寺崖線と多摩川に挟まれたエリアに2011年に誕生した二子玉川ライズは、二子玉川園(遊園地)が閉園した1985 年ごろから、地元有志によって再開発の機運が高まり、同地等を活用した市街地再開発事業として計画されました。第 1 期は 2007 年から2011年、第 2 期 2012 年から2015年と、構想から完成まで30年の時を経ました。(参照:「二子玉川ライズとは」公式サイトより)

 「二子玉川ライズ協議会」は、二子玉川ライズを構成する5つの街区の管理主体によって組織されており、鉄道事業者や各街区の管理組合で構成されています。街の賑わい創出やブランド向上を目的として主にイベントの実施などのほか、タウンマネジメントにも取り組み、発足して7年を迎えています。

二子玉川ライズ空撮

 同コンペへの応募総数は16件、同賞を受賞したのは二子玉川ライズ協議会のほかには「『並木横丁いこいこ』まちなか空店舗再生創業事業」(飯田まちづくりカンパニー)と「産学官民連携による地域と市民が主役のまちづくり」(日向市 他4団体)の2団体。ほかに「審査委員会特別賞」として「人口10万人のむらを目指す、たかが100人、されど100人のむらづくり物語」(伊座利の未来を考える推進協議会)。首都圏では唯一の受賞でした。

 今回の受賞において、二子玉川ライズは下記のような講評を得ました:

・職・住・商・遊を融合した多様空間を都心郊外部に創出しており、“郊外から都心へ”という人の 流れを変えうる先進的な取組みである。
・多摩川沿いの立地を活かした“自然環境との調和”コンセプトが独自的であり、都心にはない地域 価値を示している。多様な主体の協働によるタウンマネジメントも自立しはじめており、今後も街 の賑わい継続が期待できる。

 二子玉川ライズは、交通、広場(バスターミナル)、放送機能付きイベントホール、映画館、ホテル、街区公園、ビオトープ等を整備・誘致し、多世代・多目的で集まれる複合的な街づくりが行われています。同コンペを担当した、二子玉川ライズ協議会で東急電鉄 都市創造本部 二子玉川営業推進課 タウンマネージメントチームの内野洋介さんは「二子玉川という、郊外都市におけるオフィスビルの建設は、満員電車による都心通勤の弊害を解決するという都市問題の解決に繋がるものであり、オフィスの需要喚起を高めるため、都心部とは別の評価軸にて、従業者の関心を得ることを検討した」と明かします。その一つが豊かな自然環境の維持・創出で、同エリアは世界的な環境基準を示す「LEED ND(まちづくり部門)」のゴールド認証を取得しています(参照サイト:グリーンビルディングジャパン)。

 同エリアは、多摩川と国分寺崖線の自然に囲まれたロケーションにあることから、「在来種など昔からの貴重な自然環境を維持し継承することが重要なポイントと考えた」と内野さん。特に、第2期事業(二子玉川ライズ テラスマーケット)においては、自然豊かな再開発を掲げ、約6,000㎡の屋上緑化空間には多摩川の景観を再現した水辺空間「めだかの池」、土に実際に触れ、地域の食育環境づくりに貢献する「菜園広場」等を整備しているほか、環境省レッドブックに指定を受けているカワラノギクの種子を成育・観察・研究をしています。

地元の小学生が体験学習(菜園広場)
生きもの観察会

 こうした豊かな自然環境は、近隣の小学校の理科の校外授業の場として活用されているほか、「多摩川生きもの観察会」、「めだかの池生きもの調査」、「カワラノギク観察会」、「サツマイモ栽培体験」、「七草収穫体験」、「夏野菜収穫体験」などのイベントも近隣の子どもたちを主な対象として実施しています。昨年からはさらに地域での学習機能の充実を図るため、めだかの池に隣接し自然環境への取り組みを説明する「レクチャースペース」を設け、多摩川の水棲生物をよりよく観察できるよう「多摩川生きもの水族館」をスタート。ニホンミツバチの営巣も視野に入れ、巣箱の設置も行っているとか。

多摩川生きもの水族館

 ☞futakoloco参考記事:
  二子玉川ライズの屋上庭園にカルガモが飛来 多摩川と等々力渓谷の中継点に
  【子ども特派員レポート: Kai #5】二子玉川ライズ屋上庭園の「多摩川生きもの水族館」に行ってきました
  10/28(土)二子玉川ライズで「カワラノギク観察会」子ども参加もOK!

 最後に、内野さんに「二子玉川ライズの街づくりがこれから更に発展していくための重要ポイントとは?」と質問したところ、以下の通り4つのポイントを掲げてご回答くださいました:

①「地域との連携の強化」:
既に近隣を巻き込む形でのイベントを多数実施していますが、質・量ともに、より一層の充実を図り、近隣住民の方々に自分の居場所として認識され、愛される空間に成長することを期待しています。

②「オフィスワーカーとの連携」:
楽天をはじめ、就業人口では1万人を超える当事業において、一層の巻き込みを行い、オフィスワーカーによる利活用を通し、街への愛着を高め、地域との信頼醸成に繋げたいと考えています。

③「近隣エリアマネジメント団体との連携による街全体の価値向上」:
二子玉川の街全体の価値を向上させるため、任意団体である「二子玉川エリアマネジメンツ」が2015年4月より、エリアマネジメント活動を行っていますが、同団体へ人員や場所の協力を行いながら協働して街の価値向上、賑わいの創出に取り組んでいければと考えています。

④「学術機関との緑化・生物多様性計画に関する連携強化」:
現在では、明治大学の協力のもと、絶滅危惧種のカワラノギクの保全に取り組んでいますが、今後種々の学術機関の研究対象となるよう、働きかけを強化したいと考えています。その過程で、専門家の知見やマンパワーを取り入れながら、緑の基本計画(「世田谷区では「みどりとみずの基本計画」)や生物多様性地域戦略(世田谷区では「生きものつながる世田谷プラン」)とリンクさせ、自然環境価値を最大化出来るよう取り組んでいきたいと考えています。

 実は昨年11月に同担当に着任したばかりの内野さん。公式にはこの記事がローカルメディアデビューとなりますが、すでに「ジェームス内野」と呼ばれ、二子玉川ロコに広く認知されつつあるのです。「現在私が携わっているタウンマネジメント活動は地域と協調しながら、活力と魅力に富んだ二子玉川らしい街づくりを進めるための活動です。二子玉川の次の100年に向け、街づくりに関わる一員として、微力ながら尽力したいと思います」と、二子玉川の街への熱い思いを語ってくださいました。

 二子玉川のまちメディアfutakolocoへはサイトやラジオなどでも今後、頻繁に登場していただき、さまざまなイベントや企画についてご紹介していただけることでしょう(内野さんがなぜ「ジェームス」なのかについては、街で見かけたらご本人に直接聞いてみてくださいね!)。

 

お話を聞かせてくださったジェームス内野さん

「第2回先進的まちづくりシティコンペ」国土交通大臣賞の決定・シンポジウム開催のお知らせ

http://www.mlit.go.jp/report/press/toshi03_hh_000033.html

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この記事を書いた人

こばなお

futakoloco 編集長。玉川町会100年懇話会事務局スタッフ。主に公民連携分野のフリーランス・ライター/エディター。二子玉川在住20年。出版社勤務を経てまちづくり法人で情報・広報戦略と水辺などの公共空間における官民共創事業に従事。多摩川流域生まれ&育ち。

暮らしを起点に「ほんとうに創造的な社会とは」を考えるラボラトリー「チームうなラボ」のフェロー。自分たちのまちづくり活動の経験や学びを言語化し、ときにはゲストとの議論と振り返りをまじえて発信・活動しています。

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