【特別寄稿】瀬田玉川神社シリーズ:瘡守稲荷神社 #2 2つのニュース:世田谷名木百選と新しい鳥居の建立 はこちら
3.お稲荷さん
ところで、「お稲荷さん」が何の神さまかご存知でしょうか。
お稲荷さんの正式なお名前は「宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)」という食物を司る神様で、特に稲の靈とされます。「倉稲魂命」とも書いたりします。全国には約3,500社の稲荷神社がありますが、これは神社本庁に所属する法人格を持った神社であり、デパートや企業のビルの屋上、各ご家庭にある邸内社などを含めると数えきれないほど多くのお稲荷さんが存在します。
瘡守稲荷神社だけではなく、瀬田玉川神社の社殿の右奥にも稲荷神社が鎮座しています。
それだけ多くの皆さまに篤い信仰を受ける理由には、農村部では五穀豊穣を祈る農業の神さまとして、都市部では商売繫盛や病気平癒などの神さまとしての性格があったからと言えます。
また、稲荷神社のご社頭には、崇敬者から奉納された鳥居が幾重にもわたり建てられていることがあり、ほとんどが朱塗りの鳥居です。朱色は生命の躍動を現すとともに、古来災厄を防ぐ色としても重視されてきました。このため古くは御殿や神社の社殿などに多く用いられており、稲荷神社の鳥居の朱色もこの影響によるものと考えられます。
一方、狐を稲荷神のお使いとすることですが、これは稲荷神の農耕神としての性格と関連するものと考えられます。この信仰は「イナリ」の語源を「イネナリ」の略とするなど、田の神に対する信仰と深く結びついたものでした。田の神の信仰は当然のことながら、食物神でもある「宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)」と繋がり、稲の稔りの季節が近くなると、山から人里近くに現れるようになる狐の姿を、人々が神聖なものとして捉えたことによると考えられます。狐は稲の豊穣をもたらす山の神のお使いであり、山の神は里に降っては田の神となるため、狐は田の神である稲荷神のお使いということになるわけです。
後には、食物神の総称ともいえる「御食津神(みけつかみ)」が「三狐津神」と記述されるなど狐神に通ずることが一般に語られることからも、稲荷神と狐の結び付きが連想されます。
このほかにも、春日の鹿や日吉の猿など多くの動物が神のお使いとされており、こうしたことは自然との共存を大切に考えてきた日本人の信仰によるものといえます。
今度、お参りの際には、よ~く観察してみてください。
(瀬田玉川神社シリーズ:瘡守稲荷神社#4 に続く)
文責 瀬田玉川神社 禰宜 高橋知明
※参考文献 『神道いろは』(神社新報社発行)
- 名称
- 瘡守稲荷神社
- 所在地
- 東京都世田谷区瀬田4-32-19