昨年秋に開設された国立成育医療研究センター「女性の健康総合センター」が主催する「成育Womenʼs Healthセミナー」は、女性の心と体の健康をテーマに継続開催されているセミナーシリーズです。2025年6月13日に行われた第2回のテーマは「更年期と漢方」。今回は、オンラインと現地講堂のハイブリッド形式で開催され、一般からの参加者に加わえ、企業・自治体・医療関係者などを含む計555名が参加しました。
「ライフステージ」に寄り添う医療を学ぶ
このセミナーは、「一般の方でもわかりやすく!」をモットーに構成されており、主催者からは「今後もより多くの方に聴講していただけたら嬉しい」という思いも語られました。
futakolocoの【medicoloco(メディコロコ)】シリーズでは、「医療を暮らしとつなぐ」ことを大切に、地域の皆さんと一緒に学び、考える視点で取材を重ねています。今回のセミナーも、暮らしの中でいつか向き合うかもしれない女性の体と心の変化について、身近な言葉で学ぶ機会となりました。
更年期とは何か?その背景と症状
講師を務めたのは、女性の健康総合センター長の小宮ひろみ先生。セミナーの冒頭で、更年期の定義や症状の多様性について、科学的知見をもとにわかりやすく解説しました。
更年期は「閉経の前後約5年間」(おおむね45〜55歳)とされ、エストロゲンの低下によって起こる身体的・精神的な変化が広くみられます。日本人女性の更年期症状の実態として、以下の分類が紹介されました。
• 自律神経症状(のぼせ、ほてり、動悸 など)
• 精神神経症状(イライラ、不眠、抑うつ など)
• 泌尿生殖器症状(頻尿、性交痛 など)
• 骨格筋症状(肩こり、腰痛 など)
また、更年期症状と他の疾患との「鑑別診断」が重要であることにも触れられ、自己判断ではなく医師との連携の大切さが強調されました。
更年期を「人生を見直す時期」としてとらえる
症状の程度や持続期間には個人差があるとされています。
小宮先生は、現代における出産年齢の上昇や就労環境の変化にも言及。更年期を「不調の時期」とだけ見るのではなく、心身の変化と向き合い、生活習慣を見直す「転機」として活用する視点が紹介されました。
更年期と漢方:症状と体質に寄り添う治療の選択肢
今回のセミナーでは、「更年期と漢方」をテーマに、更年期症状の緩和における漢方の役割が重点的に取り上げられました。
小宮先生は、ホルモン変化によって現れるさまざまな症状に対し、漢方が「症状ごと」ではなく「体質ごと」に向き合う治療法であると説明。特に西洋医学では対処が難しい「なんとなく不調」にも対応できる点が、漢方の大きな特長であると語りました。
具体的には、以下のような視点が紹介されました:
• イライラや気分の落ち込み、不眠、冷え、疲労感など、複合的な更年期症状に対し、漢方薬が体全体のバランスを整える支援になること
• 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や加味逍遥散(かみしょうようさん)などの処方が、体質や状態に応じて使い分けられていること
・ 「何かおかしい」と感じる段階で早めに相談し、無理を抱え込まないことが大切という提案
こうした内容は、講演後のQ&Aにもつながり、多くの質問が寄せられました。
セミナーQ&Aより:関心の高まる実践的な話題
講演後には、参加者から寄せられた実践的な質問に対し、小宮先生が丁寧に回答されました。
漢方薬の併用や服用タイミング、市販薬と処方薬の違い、近隣の漢方診療機関の探し方など、日常に直結するテーマが多く取り上げられ、参加者の関心の高さがうかがえました。
「甘草などの成分に注意しつつ併用も可能」「体質に応じた処方が重要」といった基本的な考え方のほか、自己判断での服用を避け、医師との対話を重ねることの大切さも繰り返し強調されていました。
小宮センター長のコメントより
セミナー後には、futakoloco記者のインタビューに対し、小宮ひろみ先生から今後の展望についてのメッセージがありました。
「更年期のケアは医療者と患者がともに考え、治療目標や関心を共有しながら進めるべきものであり、生活習慣の見直しを含む包括的な支援が重要」と語られました。
また、「センターとしても、研究・臨床・開発の体制を整え、情報発信や継続的なセミナー企画を通じて、女性の健康を支える場を広げていく」との意欲が示されました。
ロコ記者の学び:更年期に性別はない
疲労感、不眠、気分の落ち込み…。テストステロンの低下によって心身にさまざまな変化が起こる「男性更年期」は、まだあまり知られていないのが現状です。症状があっても受診や相談に至らない人が多く、見過ごされやすい課題だと感じています。
今回のセミナーでも、性別を問わず更年期症状が起こるという視点が示されました。男女問わず、40代後半以降の変化に気づき、自分の体の転機へ早めに備えることで、人生の後半をより豊かに過ごせるかどうかが変わってくる──そんなメッセージが印象に残りました。
次回のセミナーは8月8日に開催予定です。申し込みは現在も可能とのこと。ご関心のあるテーマがあれば、参加してみてはいかがでしょうか。

メディコロコシリーズ
- 名称
- 国立成育医療センター
- 所在地
- 東京都世田谷区大蔵2-10-1