久しぶりにコラムを書いてみたら、前回書いたのが、多摩川水害訴訟でした。1年も経っておりました。
【コラム:ココロを扱うお仕事です】♯21 出水期に「多摩川水害訴訟」と防災について考える
そして、この間に、昨年10月の台風19号によって多摩川が氾濫したり、つい先日は、熊本県の球磨川を中心とした九州や中部地方など日本各地で発生した集中豪雨「令和2年7月豪雨」など、各地で大雨や洪水の災害が後を絶ちません。。
まずは、被害に遭われ、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。また、被災地域の1日も早い復興を祈って止みません。
今回は、災害支援に取り組む今田健太郎弁護士(広島弁護士会所属)が提言している「水害直後の10か条」をご紹介します。
【水害直後 弁護士からの10か条】〜西日本豪雨の教訓を踏まえて
1 土砂撤去で無理をしないで。
自宅も気になりますが、土砂は細菌も含んでおり、想像以上に健康状態を悪化させ、災害関連死のリスクを高めます。自力では限界があるので、まずは体力の回復に努めてください。行政やボランティアからの案内を待ちましょう。
2 通帳や権利証を紛失しても大丈夫。
銀行の預金通帳や、定期預金証書、不動産の権利証などを紛失しても、財産はなくなりませんので、安心して下さい。
3 落ち着いたら、自宅の写真撮影を。
自宅の写真を、複数の角度から撮影し、被害に見合った罹災証明書の発行を受けられるようにしましょう。判定の結果は、公的支援の内容に影響します。不服があれば再調査の申入れが可能です。
4 修理は決して急がず。
自宅の修理は、乾燥してから行う必要があります。また、災害救助法の応急修理の制度(例:半壊以上で58万4000円までの費用補助)を使うと、原則、仮設住宅へ入居できません。慌てないで、全体の修理内容や費用面をしっかり検討してからにしましょう。一部だけの修理で、壊れたままの家に住むことを余儀なくされる可能性があります。
5 お金を払う前に、行政の窓口で相談を。
砂の撤去や、自宅の修理につき、公的支援の制度があります。事前に役所へ相談しないで業者などに支払った場合、後から請求できないことがあるので、要注意です。必ず行政窓口で相談してください。もっとも、被災直後は、自治体も対応できないケースがありますので、体制が整うまで、待ちましょう。
各自治体ごとにホームページを開設していますので、情報を確認してみて下さい。
6 保険の内容を確認しよう。
近時の住宅保険には、火災保険に水災の補償が付いているものが多いです。また、家財保険による補填も考えられます。自分名義でなく、親族が契約している場合もあるので、よく確認してみましょう。証券を紛失しても請求できます。自動車保険も同様です。
7 敷地内の物の処分や撤去について。
自宅に流れ着いた第三者の物や、廃棄物の処分について悩んだ場合、まずは、行政窓口や、各地の弁護士会が近々開設する被災者電話相談などを利用して、処分してよいかどうか、費用はどうするか等、相談してみてください。
また、隣家の家財やブロックなど、所有者が分かっていて撤去を求めたい場合も、すぐには解決できないこともありますので、ケンカせず、弁護士会などを頼ってください。
弁護士による面談相談を希望される場合は、下記の番号より、最寄りの法律相談センターに予約が可能です。(お急ぎでない場合には、無料電話相談が開設されるのをお待ち下さい。)
0570-783-110 (最寄りの弁護士会法律相談センターに繋がります)
8 収入の目処が立たない方々へ。
水害で職場が水没した。道路が寸断されて、勤務先へ行けない。明日からの収入の目処が立たない方々に対しては、雇用保険の失業給付等、色々な制度があります。
また、雇い主側を補助する制度もありますので、少し落ち着いたら、各自治体や弁護士会の電話相談などにお問い合わせ下さい。
事業者(個人も)向けの融資や、地域を再生するためのグループ補助金などもあります。
弁護士による相談の場合、各種ローンの返済などのお困りごとにも対応します。
9 税金の減免や、教育の補助など。
大規模災害時には、各種税金等の免除や、水道光熱費の特例、教育費用の補助など、実に様々な支援が用意されています。
行政も、まだ機能していない地域もあるかもしれませんが、慌てることなく、相談体制が整うのを待ちましょう。
10 必ずや生活再建は出来ます!
愛着のある家を失って、途方に暮れている方々が大多数だと思います。西日本豪雨災害も同様でした。
しかし、今後、公的制度による給付金(生活再建支援金等)や、義援金、保険金、各種の融資制度、二重ローン減免制度など、色々な仕組みを活用することで、生活再建を図ることは可能です!
高齢者の方々に向けての、修理や再築のための特例融資制度もあります。
『難しいことはよく分からない』分からなくて当然です。
ぜひ、弁護士などの専門家を頼ってください。
相談費用などは無料になるはずなので、ぜひ、案内が始まったら、どんな些細なことでも構いませんので、利用してみてください。
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10カ条の英訳が掲載されたブログ「弁護士YA日記」もご紹介しておきます。葦名ゆき弁護士によるページです。周囲の外国人の方々へぜひお知らせください。
この夏も秋も、また梅雨や台風などの大雨や洪水が当然のようにやって来ることが予想されます。
防災や減災の備えをして、災害が大きくならないことを祈るばかりですが、どうしても災害は人の力では防ぎ切ることはできません。そんな時は、今回のブログで紹介した10か条を思い出してみてください。
最後に、前回のコラムでご紹介した「二子玉川 防災情報案内」が2020年版として7月8日に最新版にアップデートされましたのでお知らせします。災害は、避難行動も含め地域ごとに状況が異なります。いざというときのために二子玉川エリアにお住いの方々の役に立つと思われる防災情報が一つのページにまとめられていますのでご参考ください。
また、今回から、新型コロナウイルス感染症の予防を踏まえた防災・避難について追加されています。新型コロナウイルス感染症の拡大下とアフターコロナにおける「新しい生活様式」での「新しい防災」という視点で編集されています。
昨年10月に発生した台風19号による水害を地域の貴重な記録として地域の団体がまとめた「二子玉川2019水害の記憶」についてもオンライン版をこちらで読むことができます。
参考資料:
NHK「大雨災害 覚えておきたい『10か条』」(くらし☆解説)
NHKが今田弁護士の了承を得て順番や表現の修正を行った10カ条になります。イラスト付きで分かりやすいので参考になります。